98:【海棠眠り未だ足らず】 出典:冷斎夜話・詩出本処 |
《 意味 》
美人が酔って眠り、まだ眠り足りずに起きたときのなまめかしい姿をいう。「海棠」は、春に花をつけるバラ科の木名だが、ここでは美女のたとえ。唐の玄宗皇帝が楊貴妃の美を称した言葉。
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《 訳文 》
上皇(玄宗)は、小高い所にある沈香亭に登られて、太真妃子(楊貴妃)を呼び寄せられた。妃子は、朝飲んだ酒の酔いからまだ醒めていなかった。上皇は宦官の高力士と従侍児に命じて、妃子の両わきを支えさせて連れて来させた。妃子は酔顔に薄く化粧を残し、鬢の毛はほつれ簪は曲がり、きちんとした挨拶もできなかった。上皇はそれを見て笑って「これは妃子が酔っているのではなく、これぞ海棠の花の眠りがまだ足りないなまめかしい姿である。」と言った。
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《 原文 》
上皇登沈香亭、詔太真妃子。妃子卯酔未醒。命力士従侍児、扶掖而至。妃子酔顔残粧、鬢乱釵横、不能再拝。上皇笑曰、豈是妃子酔。真海棠睡未足耳
上皇沈香亭に登り、太真妃子を詔す。妃子卯酔未だ醒めず。力士従侍児に命じ、扶掖して至らしむ。妃子酔顔残粧、鬢乱釵横にして、再拝能わず。上皇笑いて曰く、豈に是れ妃子の酔ならんや。真に海棠の睡り未だ足らざるのみ
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《 一言多い解説 》
海棠のたとえは美しい女性。では、姥桜はどうでしょう
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