92:【海翁かいおう)かもめ)を好む】 出典:烈子・黄帝
《 意味 》

 野心や危険を察知すればだれも近づかぬこと。無心のときには慣れて遊んでいたかもめ)も、捕えようとすると近づかなくなったことからいう。「海翁」は、海のほとりに住む翁の意。
 
《 訳文 》

 海のほとりに住む人で鴎を好む者がいた。毎朝海のほとりに行って鴎と一緒に遊んでいると、百羽以上の鴎が寄ってくるようになった。あるとき、その父親がそれを知り、鴎を捕まえてこいと命じた。翌朝そのつもりで海に出かけると、彼の心を感じとってか、鴎はいつものように彼のところに集まってこなかった。

《 原文 》

 海上之人、有好漚鳥者。毎旦之海上、従漚鳥游。漚鳥之至者、百住而不止。其父曰、吾聞、漚鳥皆従汝游。汝取来、吾玩之。明日之海上、漚鳥舞而不下也

 海上の人に漚鳥おうちょう)を好む者有り。毎旦まいたん)海上に之き、漚鳥に従いてあそ)ぶ。漚鳥の至る者百すう)にして止まらず。その父曰、吾聞く、漚鳥は皆汝に従いて游ぶ、と。汝取りて来たれ。吾これをもてあそ)ばん、と。明日会場に之くに、漚鳥舞うも、下らざるなり。

《 一言多い解説 》

 剣客は人を殺す前に己の殺気を殺す