74:【淵中えんちゅう)の魚を知る者は不祥なり】 出典:韓非子・説林ぜいりん)・上
《 意味 》

 政治は大網を把握していればよいというたとえ。また、物事の隅々まで知り尽くすことは危険であるというたとえ。
 
《 訳文 》

 (斉の豪族の田成子でんせいし)は周辺の地を我がものにしようとしていたが、視界を妨げる隰子しゅうし)の家の木がじゃまであった。)それを察して木を切ろうとした隰子は、「昔の諺に、『だれもわからぬはずの淵の底深く泳いている魚が見えてしまうようでは、きっと不吉な運に出会うことになる。』といっている。田成子に、わたしがだれも気づかぬ微妙なところまで察する男だとわかったら、わたしの身は危うくなるにちがいない。」(と言って、切るのをやめた。)

《 原文 》

 隰子曰、古者有諺曰、知淵中之魚者不祥。 ・・・ 而我示之知微、我必危矣

 隰子曰く、古者いにしえ)に諺有りて曰く、淵中えんちゅう)の魚を知る者は不祥なり、と。 ・・・ しこう)して我これに微を知るを示さねば、我必ず危うし、と

《 解説 》

 人の胸中に有るものを悟らぬのも危うい