72:【燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや】 出典:史記・陳渉世家せいか)
《 意味 》

 つまらない人物には大人物の遠大な志はわからないということ。「鴻鵠」は、「おおとり」と「くぐい」という大きな獲れ。小さな鳥にどうして大きな鳥の心がわかるだろうかという意味。
 
《 訳文 》

 (秦が中国を支配したとき、陽城(河南省)に)陳渉ちんしょう)陳渉という男がいた。小作人として働いていたが、耕作の手を休めて畔に行き、身の上を嘆くことしばらくして言った。「もし自分が偉くなったらお前たちのことを忘れずにいてやろう。」すると仲間たちは、笑って答えた。「お前は人に雇われて耕している。なんで富貴を望めようか。」陳渉はため息をついて言った。「燕や雀のような小鳥に、どうして鴻や鵠のような大きな鳥の気持ちがわかるだろうか。」

《 原文 》

 陳渉少時、嘗與人傭耕。輟耕之壟上、
 悵恨久之、曰、苟富貴無相忘。
 庸者笑而應曰、若庸耕。何富貴也。
 陳渉太息曰、嗟乎、燕雀安知鴻鵠之志哉。

 陳渉わか)き時、かつ)て人のため)傭耕ようこう)す。耕を)めて壟上ろうじょう))き、悵恨ちょうこん)することこれ)を久しうして、曰く。いやし)くも富貴とならば相忘るること無けん、と。庸者ようしゃ)笑いて應えて曰く、なんじ)庸耕を為す。何ぞ富貴ならん也と。陳渉太息して曰く、嗟乎ああ)、燕雀いずく)んぞ鴻鵠の志を知らんや、と。

《 解説 》

 陳渉は秦に対して、初めて反乱を起こした人物で、一度は楚の王となった。しかし結局は失敗して、天下を取ることはできなかった。しかし、、司馬遷は、彼のそうした先駆的な行動を、独自のものと評価し、『史記』の中て、諸侯の記録である世家にいれている。