69:【煙霞えんか)痼疾こしつ)】 出典:唐書・田游巌でんゆうがん)
《 意味 》

 山水の風景を愛する気持ちが強いことのたとえ。また、旅を好むことのたとえ。隠居することのたとえにも用いる。「煙霞」は、もやと、朝焼け夕焼けの美しい景色。「痼疾」は、長い間治らない病気。また習癖の事。したがって「煙霞の癖」ともいう。
 
《 訳文 》

 (唐の高宗は、游巌が官吏をやめて山に隠居してしまったのを惜しんで、嵩山すうざん)に行幸したとき、游巌を訪ねて彼に言った。)「先生、このごろはおげんきでしょうか」 游巌は、「わたくしは泉石にとりつかれ、山水の美しさにひかれた病人になっています。」と答えた。

《 原文 》

 先生比佳否。答曰、臣所謂泉石膏肓、煙霞痼疾者

 先生比佳なりや否や、と。答えて曰く、臣は所謂泉石の膏肓、煙霞の痼疾なる者なり、と。

◎ 解説

 游巌の高宗に対してへり下った答え方が素晴らしい。人に何か差し上げるのに「つまらないものですが」と言われて受けたものを、ありがたく頂くことも賢人の交わりとして、大事な心がけである。