385【宋襄そうじょう)の仁】 出典・十八史略・春秋戦国・宋
《 意味 》

 つまらぬ情けをかけること。無駄な同情の例え。愚かな仁者(慈愛心の持ち主)をいう。宋の襄王が楚との戦いの際、敵の軍隊が整わないうちに攻撃することを「君子は人をやく)くる)しめず(君子たるもの他人の困難につけいらぬものだ)」と言って退け、結局楚に破れてしまったという故事による。事の是非や状況の正しい判断ができずに、つまらぬ思いやりを示す似非えせ)君子を軽蔑していう
 
《 訳文 》

 (宋の国に)襄公茲父そんこうじほ)という者がいて、諸侯の覇者になろうと思い、楚と戦った。その際、公子の目夷もくい)が、敵の陣が整わないうちに攻撃をしかけるように進言した。すると襄公は、「君子たるもの他人の困難に付け入らないものだ」と言ってその進言を退けた。結局、宋は楚に破れてしまった。世間の人たちは「宋襄の仁」といて嘲り笑った

《 原文 》

 有襄公茲父者、欲覇諸侯、与楚戦、公子目夷、請及其未陣撃之、公曰、君子不因人於阨。遂為楚所敗。世笑以為宋襄之仁

 襄公茲父なる者有り、諸侯に覇たらんと欲して、楚と戦う。公子目夷、その未だ陣せざるに及んでこれを撃たんと請う。公曰く、君子は人を阨に因しめず、と。遂に楚の敗る所と為る。世笑いて以て宋襄の仁と為す
 
《一言多い解説》

 自分に負けた