312【春宵しゅんしょう)一刻値千金】 出典・蘇軾そしょく)詩・春夜
《 意味 》

 すばらしい時。楽しい時。何ものにも代えがたい時。また、その季節。「一刻千金」ともいう

 
《 訳文 》

 春の宵はわずかな時間も千金に値するほど、代えがたい味わいがある。花の香りは清らかに、月はおぼろにかすんでいる。歌や楽器でにぎやかだった高殿も、今は物音一つせず静まりかえって、中庭のぶらんこにも人影は見えず、夜はひっそりと更けていく

 
《 原文 》

 春宵一刻直千金    春宵一刻直千金
 花有清香月有陰    花に清香有り月に陰有り
 歌菅楼台人寂寂    歌菅楼かかんろう)台人寂寂せきせき)
 鞦韆院落夜沈沈    鞦韆院しゅうせんいん)落夜沈沈ちんちん)

《解説》

 「あたい)」は「値」と同じ。「一刻」は正確には一日の百分の一をいうが、「わずかな時刻」と解してよい。「千金」は、黄金一斤で、大金のこと。この詩は蘇軾(1036~1101)の代代表作の一つで、とくに起句の一句が独立して成句となった。
 

   

   
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