305【柔)く剛を制す】 出典・老子・七十八章
《 意味 》

 かたくなで強いものは、かえって柔軟性に富むものに抑えられる。「柔」は柔軟・柔弱。「剛」は剛強・剛猛

 
《 訳文 》

 世の中で最も柔軟なものは水である。だが堅く強いものを攻めるに水より優れたものを私は知らない。水に代わるものなどありはしない。弱いものが強いものに勝ち、柔らかいものが堅いものに勝つという道理を知らぬ人はいないが、その道理を実行し得る人はいない。
 
《 原文 》

 天下柔弱莫過於水、而攻堅強者、莫知能勝。其無以易之。弱之勝強、柔之勝剛、天下莫不知、莫能行

 天下の柔弱水に過ぐるは)し、しか)も堅強を攻むる者、能く勝つを知る莫し。それ以てこれに)わるもの無し。弱の強に勝ち、柔の剛に勝つは、天下知らざるもの莫きも、能く行う莫し

《解説》

 この、柔弱なものが堅く強いものを制御するという説は道家どうか)思想の重要な一つのポイントである。『老子』七十六章にも、「人が生まれ出た時は身体が柔弱であるが、死ぬと堅くこわばる。だから堅強なものは死の仲間、柔弱なものは生の仲間、という」とある