218【犬兎の争い】 出典・戦国策・斉策
《 意味 》

 勝利の見通しがなく無益に争うこと。また、互角の争いのすきに第三者が利益をおさめること。
 
《 訳文 》

 韓子盧かんしろ)というのは天下に名だたる俊足の犬であり、東郭逡とうかくしゅん)というのは天下に無類のすばしっこい兎であった。この韓子盧が東郭逡を追いかけて、山を三回まわり、五回も駆け登ったが、兎は前方で疲れ果て、犬は後ろで足も萎えてしまい、ついに両者共にそこで息絶えてしまった。農夫はこれらを見つけて、なんの苦労もせずに両方を獲物として捕らえた。

《 原文 》

 韓子盧者天下之疾犬也。東郭逡者海内之狡兎也。韓子盧逐東郭逡、環山者三、騰山者五。兎極於前、犬廃於後、犬兎倶罷、各死其処。田父見之、無労勌之苦、而擅其功

 韓子盧は天下の疾犬なり。東郭逡は海内かいだい)の狡兎なり。韓子盧、東郭を)い、山を環ること三たびし、山をのぼ)ること五たびす。兎は前につか)れ、犬は後ろにたお)れ、犬兎おのおの)とも)つか)れ、その処に死す。田父これを見、労勌ろうけん)の苦無くして、その功を、ほしいまま)にす。

《一言多い解説》

 漁夫といい農夫といい、たまにはいい思いをすることができる、とする教訓か