216【健啖】 出典・世説新語補・軽詆けいてい)
《 意味 》

 大食のたとえ。「健」は、非常にの意で、程度の甚だしいこと。大いに食べるの意。

 
《 訳文 》

 ある人が禰正平でいせいへい)(禰衡でいこう))に、「荀令君じゅんれいくん)(荀彧じゅんいく))と趙盪寇ちょうとうこう)の二人は、今の世で上に立つことのできる人物だろうか」と聞くと、禰正平は「文若(荀令君の字)は葬式の弔問役にちょうどいいし、稚長ちちょう)(趙盪寇の字)は客をよぶときの厨房の監督役にうってつけだろう」と答えた。その返事の真意は、荀令君は外観が立派だというだけであり、趙盪寇は肉をよく食うということなのである

《 原文 》

 人問禰正平、荀令君趙盪寇、皆足蓋当世乎。禰答曰、文若可借面弔喪、稚長可使監厨請客。其意以荀但有貌、趙健啖肉也

 人禰正平に問う、荀令君、趙盪寇は皆当世をおお)うに足るか、と。禰答えて曰く、文若は面を借りて喪を弔うべく、稚長は厨を監し客を請わしむべし、と。その意は、荀は)かたち)有るのみ、趙は肉を健啖するを以てなり

《一言多い解説》

 世に長ずる才能なんて、大したものではない。チョッとした容貌、ちょっとした特技程度のもの