190【苦肉の計】 出典: 三国志演義・第四十六回
《 意味 》

 苦しまぎれの計略・手段のたとえ。また、自分を犠牲にしてまでも、苦しい状況を脱しようとすること。「肉」は、肉体・身体の意。肉体を苦しめてまで、困難な状況を改善しようとする計略、と言う意味。

《 訳文 》

 (三国時代、魏の曹操そうそう)は呉の国を攻めるために、長江(揚子江))に水軍の大部隊を集結させた。呉の軍師である周瑜しゅうゆ)は火責めの作戦を立てるが、それを実行するには、魏軍の中に味方を潜伏させておく必要があった。ある日、周瑜が呉軍の士気を鼓舞すると、将軍の黄蓋こうがい)が魏の大軍には勝つ見込みはないから降伏すべきだと言った。周瑜はこれを聴いて激怒し、黄蓋を棒たたきの刑に処した。そのころ呉に滞在していた蜀の軍師の諸葛孔明しょかつこうめい)は、この様子を見て言った。)「自分の身を苦しめる苦肉の計略を用いなければ、魏の曹操をを欺くことはできないだろう」。(黄蓋が魏軍に入り込むには、魏に寝返った事を信用させなければならない。そのために黄蓋は自分の身を犠牲にしてひと芝居打ち、呉に恨みを抱いているように見せかけたのである。この後、黄蓋は見事に任務をやりとげ、呉は魏に大勝した。これが有名な赤壁の闘いである。

《 原文 》

 不要苦肉計、何能瞞過曹操

 苦肉の計を用いざれば、何ぞ能く曹操を瞞過まんか)せんや

《一言多い解説》

 敵を欺くためには、味方を欺け