166【牛耳ぎゅうじ)を執る】 出典:春秋左氏伝・定公八年
《 意味 》

 主導権を握ること。同盟の主宰者となること。「牛耳を執る」は、春秋時代の諸侯が同盟を結ぶとき、盟主が牛の左耳を切り取って、他の同盟者とその血をすすり合ったという故事とされているが、原典によれば、牛の耳を切り落とすのは盟主となる地位の高い者の役目ではなく、同盟を誓い合う者の中で最も地位の低い者の役目である。まず、盟主が牛の耳の血をすすって、その後、盟主が決めた順序に従ってすすっていくのが正式な方法である。それがいつの間にか「牛耳を執る」「牛耳る」で盟主の意として用いられるようになった。

《 訳文 》

 衛の国の人が、(今、地位の高い衛の君主と、地位の低い晋の大臣とが同盟を結ぼうとしているのだから、衛の君主が盟主になり)牛の耳を切り落とす役目は晋の大臣がやるべきだと言った。

《 原文 》

 衛人請執牛耳

 衛人牛耳を執らんことを請う

《 一言多い解説 》

 主導権争いは、まず式次第を決める所から始まっている