101:【偕老同穴かいろうどうけつ)】 出典:詩経・邶風はいふう)撃鼓げきこ) ーー 詩経・王風・大車
《 意味 》

 夫婦むつまじいことをいう。また、その契りの言葉。「偕老」は、ともに老いること、「同穴」は、墓を同じくすること。夫婦はいつでも一緒に仲よく生き、死んだら同じ墓に葬られるのが理想的なあり方だという意味。「偕老」も「同穴」も『詩経』を出典とするが、四字句で出てくるわけではない。
 
《 訳文 》 <邶風>

 (出兵した兵士が故郷の妻を慕い嘆いて言う。)(家にいる妻よ、)死ぬも生きるもどんな苦しい目に遭おうとも、おまえとわたしの間には取り交わした誓いがある。おまえの手を取って、おまえと一緒に共白髪まで生きようという誓いが。

《 原文 》

 死生契闊、与子成説。執子之手、与子偕老。

 死生契闊しせいけつかつ)なんじ)ちかい)を成す。子の手を執りて、子ととも)に老いん、と

《 訳文 》 <王風>

 (世間の掟に背いて結婚しようとする男女が、役人のとがめを受けるのではないかと恐れ、女が男に誓って言う。)生きているときは同じ部屋に住んでいるわけではないけれど、死んだら同じ墓に入りましょう。わたしがうそをついていうの。私の誓いはあの白く輝く太陽のように偽りはないの。

 
《 原文 》

 )きては則ち室を異にするも、死しては則ちけつ)を同じうせん。われ)まこと)あらずと謂うか、しろ)き日の如く有り。

 則異室、死則同穴。謂予不信、有如皦日

《 解説 》

 「偕老」は「詩経」では他に鄘風・君子偕老と、衛風・氓(=行商人)に出てくる。しかし鄘風の場合は、夫を裏切った貴婦人を非難する詩で、「共白髪まで」と言いながら夫をだましているという意味に用いている。また、衛風・氓では、行商人が村の娘をたぶらかして妻にするが、すぐに飽きて捨ててしまう。女が自らを嘆いて「あなたと、共白髪までと思っていたのに」と恨む詩である。例としてあげた邶風・撃鼓も戦争のため生き別れを強いられた夫婦の嘆きの詩であるし、王風・大車も結婚を妨げられた女の悲しみの詩である。現存する出典『詩経』では、「夫婦が添い遂げられぬ苦しさ」を歌った詩ばかりであり、現在のようにおめでたい言葉として使われている例はない。