昨年の暮、おせち料理を自分で作った。家にある和食料理本『つきぢ田村の日本料理 厳選300レシピ事典』の指導の下、“栗きんとん”、“ごまめ”、“五色なます”を作った。他にも紹介している料理は多かったが、それぞれに下拵えがとても細やかであって、自分ひとりではこの品数が、先ずは妥当−−限界とは言わない−−かなと言うことで、各品ほぼ同時スタートで料理に取り掛かり、そして全てを造り上げたのだ。 正月二日、細君の実家に細君のきょうだい一家が集まる。招く義母は、かつては、皆んなのために幾日間かを身を粉にしておせち料理作りをして迎えてくれた。しかし、高齢となり長女である私の細君が昨年度に、「もう、無理して作らなくてもいいよ」と声を掛けたという話を聞いて、自分が腕まくりする事になったのだ。 そして、過ぐる本年元旦、刺身系および、一品おせち料理に混じって私の作った料理が並んだ。先ずは我が家の細君と息子を満足させ、続けて翌日実家に私の作となる三品を持ちより、今度は集まった一同の口にも箸で運んでもらった。一言で言うと、味が上品なのだ。一族一同が納得する処が、この味の上品さだった。ひとつひとつの素材の味がストレートに舌に乗り、お互いの味同志が次に口いっぱいにハーモニーを奏でる。 ナマの人の声と、電子合成音による人の声の違いと言えば良いだろう。これらをそれぞれに合唱させる事の更なる違いを想像することで、理解できるのではなかろうか。 製作した自分自身の喜びも凄かった。駆け出しの小僧が、先ずは、調理場の片隅で作った料理の味見をしてまず、「やったーッ」と独りほくそ笑み、次に料理長とかお客さんに「おいしい」と喜んでもらった時の大満足なのだ。 よし、そろそろ来年の正月おせち料理の準備に取り掛かろう。昨日は、23日天皇誕生日だった。そして今日はクリスマス・イヴ。まずはお品書きを作ろう、テーマは、“宮廷の生誕菜”−−−昨年同様高級食材は一切用いない。先にこの内容を抑えておけば、その他の買出しにも選び出しがラクに出来るだろう。 |
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平成二十年度 berander亭 『おせち料理』 宮廷の生誕菜
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連作・新作作成に当たり、料理素材の調達の時期をこれから検討しなければならない。本年は、仕出しのタイミングにも配慮が必要となる。 尚、我が家の厨房においては、料理長に細君を据え、自分は優秀な料理職人として、立場を明確にしております。 |