EXIT
松橋 帆波様  お酒のたわごと   
   第29話  投資の話(四)   2006年4月4日

 いよいよというか、とうとうライブドアの上場廃止が決定した。皮肉なことにUSENとの業務提携もあってその後株価が上昇を始めている。「22万人という大勢の株主に被害を与えた・・なんたらかんたら・・」という評論家や政治家、コメンテーターらが居るがとんでもない間違い、勘違いである。ライブドアの決算粉飾疑惑の内容は、単純に赤字を補填して経営陣が保身を図るというものではなく、株価に反映しやすい部分へ株価に反映しにくい部分の利益を付け替えて、よりいっそうの株価の上昇を目指したものである、と言える。従ってその株価を作り上げたものたちは、経営陣、関連会社、株主、マスコミ、政治、全てが共犯者でもあるのだ。

 つまり、改革、開放、自由化、言葉は何とでも言えるが、オープンになれば良いものも悪いものも生まれてくる。その状況下で良いものを伸ばし、悪いものに徹底した罰を与えるという法整備をしてこなかった政治、視聴率が取れるからと持ち上げたマスコミ、誰もが知る名前をブランドとして利用した関連会社、短期の利益のためだけに売買を繰り返した投資家。報道されている犯罪が事実ならば、これらみんなが共犯者だ。

 もちろん主犯は企業に違いないのだが、被害者がいるとすれば、日本の市場全体かも知れない。「株は底値で買うことも、天井で売ることも出来ない」と師匠は言う。「株で儲けるには、安値で買って、高値で売る。これは当たり前のことだが、みんなが安いと思って買おうとしても、数に限りがあるのだから、

 もう底値だろうと思う人間がいればいるほど底値は切り上がって行く。そして、もうこの辺だろうとみんなが売り始めると、今度は、みんながもうこの辺だろうと思っているものを買いたい人間がいるかどうかという問題にぶち当たたる。買い手がいなければ売れないんだ。

 
まだ上がると思うけれど、私はもういくらか利益を取りましたから、残りの利益をどなたかに譲りたいのですが、的な感覚でいないと利確し続けることは難しい。投資でババ抜きをやったらまず勝てないんだ。」そして「数億、数十億儲けた人間がいると報道されてるが、この世の中に投資家は何人いるんだ?何万人か?何十万人か?何百万人か?そんな中で一桁の数の人間が数億儲けたからといって、どうして自分がその何百万人分の一になれると思うんだ?運と確率や統計を取り違えてるんだよ。」

 師匠は私を見透かすように言う「世の中には運だけで儲かる人間が実際にいる。ただ、そういう奴らは自分に運があるかないかなんて考えないし、必勝法とか、ハウツー本なんて見ない。そんな必要がないし、そんなことに悩む理由も無いんだ。そういう本やらサイトやらを見ている時点でそいつには運が無いんだよ。だから自分の事をよく見て、自分のフォームを崩さないで投資をすることだな。出来ないんなら初めからやらないほうがいい。株は売るもんじゃやない。買って持ってるもんだ。」

 とりあえず酒が飲めない私がそう長く師匠を独り占めしているわけにも行かないので、ありがたいお話を拝聴した分、お茶代は私が払うことにした。帰り際に師匠が「十年持つなら、キーワードは中国だな。それとバイオ。まぁ頑張れ。」だと。さて、帰ってから四季報をめくることにしようか・・。

 
もう一杯お代わりを勧めたが、師匠は飲まず。私もそうは飲めないので。お開きに。早く体調をもどして。一杯やりながらの講義に戻りたいものである。

   おかわり