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松橋 帆波様  お酒のたわごと   
   第28話  投資の話(三)   2006年3月13日

 師匠はネット証券を利用していない。「あんなものはダメだ。簡単に情報が得られて、直ぐに売買が出来るとなると、どうしても短期に目が行く。そうするとフォームが崩れるんだよ。ちょっと考えれば解るだろ。今まで日単位で株価を追ってた奴が、それこそ時分秒で株価を見られるんだぞ。おかしくなる事請け合いだよ。」

 私はこの言葉を「古い」という言葉で括っていたのだが、実際ネット証券に講座を開いてから、この師匠の意味を痛感している。一喜一憂しすぎるのだ。「利薄損大」という投資・投機、株式・為替にかかわらず一番やってはいけない行為をしてしまいがちになる。愚かな話だが、FX(為替保証金取引)で文字通りのショート、20分30分という取引をしてしまう。2,000円、3,000円儲けては5,000円、10,000円損切りするなどと言うスパイラルに落ち込んでしまう。

 もっと情けないのは金曜日にショートで持ってしまうことだ。このことも師匠にこっぴどく言われた。「リバレッジが少ないからと言って、お前は何億、何千万の取引をするわけじゃないだろー!阿呆としか言いようがないな。」ちなみに、為替取引きの仕組みを説明しておくと、ショートとは売りのポジションで取引すること。逆に買い持ちはロングという。リバレッジ、すなわち保証金の何倍までの取引をするかであるが、たとえば10倍なら、1万通貨単位で10万通貨単位の取引をすることになる。一ドル120円なら120万円と認識すればいい。ロングでこれが120円20銭になれば120万2千円、で2千円の浮き。119円80銭になれば119万8千円で2千円の損。ショートならその逆である。

 現在日本はゼロ金利政策をとっているから、他国の通貨、たとえばドルを買う場合、10万通貨単位分のドルの利息を日計りで貰うことが出来る。決済の時には円の金利を払うわけだから、買い持ちのポジション(ロング)は長く持っていると利息がそれだけ付く事になる。逆にショートの場合は、ドルを借りて売っているわけだから、決済時には円の利息を貰うことになる。円は利息がないから、その分利息を取られることになる。

 為替相場が円高にならない限り、利益どころか取られる利息がどんどん日計りで加算していくわけだ。日計りだから土、日の市場が開いていないときも関係がない。だから金曜日にショートポジションでいると、取引が出来ない二日間の分も利息を取られてしまうわけだ。「ライブドアはネット証券が一般的になりつつある時代を上手く利用していたな。

 売買単位が小さくて、単価が低い株式、社長はマスコミに出ずっぱだろ、毎日何が起こるかって情報が取りやすいネットの特性にピッタリの戦略だな。」師匠はライブドアの企業としての存在よりも日々報道されるパフォーマンスと世の中の投資スタイルが変化していくことに違和感を感じていたようだ。

 
師私はココアを追加注文した。胃潰瘍が癒えたばかりでコーヒーが飲めないのは辛い。師匠が吸うタバコはもっと辛い。

   おかわり