EXIT
松橋 帆波様  お酒のたわごと   
   第26話  投資の話(一)   2006年2月21日

 ライブドアが大変なことになってしまった。私は昨年の秋頃から体調が優れなかったので、師匠や投資仲間と会えないでいた。先日久しぶりに酒抜きで師匠と会ったので、この一連の事柄について、私が思うこと、師匠が感じたことをまとめておきたいと思う。

 去年師匠は住友系銘柄でずいぶん利益をあげたようだ。私は新しいパソコンが欲しくて、住金、住金鉱を早い時期で利食ってしまい、ずいぶん悔しい思いをした。その分12月に第一カッター工業で結構儲けさせてもらい、新しいパソコンをまた買ってしまったのだが、このことについて師匠からずいぶんこっぴどい苦言を貰ってしまった。11月21日に、マンションの耐震偽造の話題が出たとき、解体業というキーワードで第一カッターを購入した。その後数日ストップ高が続き、今から見ると一番の高値の時に手放した。

 「お前はろくでもない人間だな!人の不幸で儲けるとは何だ!そんなのは投資じゃなくて投機だ!当分株なんかやらないほうがいい!」師匠はそう言って私のことを睨みつけた。それまでの私の投資スタイルは、中長期的、配当性向、実業、日銭系、の銘柄を持つというものだったのだが、ソフトバンクやライブドアというIT系の値動きの激しいものを短期で扱うようになってから、そのスタイルが変化していった。

 当然損切りもするようになる。基本的に市中金利と配当、キャピタルゲインとの差を見ながら、年率で現物を運用するスタイルだと株式はそんなにリスクが高いものではないのだが、それを忘れてしまっていた。

 「人間の生活に必要な銘柄を選ぶこと。市場と社会をつなぐことが投資の王道だ。」と師匠は言う。「頭で解っているだけではダメなんだ、実践できるかどうかが大事で、実践できないのなら評論家をやっていればいい。」師匠の言葉は全くもっともである。「会計書が読めるのならライブドアなど買えなかっただろ!」と言われて私は、私の思うところを師匠に問うてみることにした。「ライブドアは新興市場のいくつかの銘柄と同じで、資本と負債のバランスが普通の企業とは違っています。彼らの資産の内容はほとんどが市場から集めた資本を転換したもので、そのことはある意味、現行の制度を利用した新しい実験・錬金術ではないかと思うんです。その行き着く先を見てみたい。それが私がライブドアを買った一番の理由です。」

 「買う買わないは勝手だからな」と師匠。「それに、私が面白いと思ったのは、グループ企業が持ち株会社を形成し、そのスケールメリット及び新会社法に対応するためのシステム作りをしている中で、ライブドアはまずホールディングスを先に作って、そこにグループを形成していくと言う逆のやり方を実践したという点です。もっと言えば、銀行が不良債権を処理するにあたって、数兆円の税金を投入され、それが資本なのか負債なのか、曖昧なまま資産の減損会計に使われマイナスが消えたことを、債権の無い状態でやればあっという間に数百億円くらい集まるんじゃないか、という冗談のようなというか、コロンブスの卵的な発想を実践したという点も魅力でした。」

 師匠はため息を吐いて「だから、そう言う考え方は評論家だって。投資とは違うよ。考えてみろ、そんなことばかり追いかけてるうちに、お前のポートフォリオは配当が出ないものになってるんじゃないか?」私はぐうの音も出なかった。師匠の言う通り、私の持ち株はマザースやヘラクレス銘柄の比率が高くなり、配当ほとんど期待できないものになっている。下がり出すとキャピタルゲインすら取れなくなってしまう。十年以上株式投資を行ってきて、真剣に損切りを考えなければならない状態にある。

 
一月某日。師匠はコーヒーとアップルパイ。私はレモンティー。ほとんど飲まないまま冷めてしまった・・。

   おかわり