EXIT
松橋 帆波様  お酒のたわごと   
   第22話     1月5日

 恒例の「自然発生的新年会」が正月二日にあった。自然発生的というのは誰かが音頭を取るでなく、幹事がいるわけでも、会費があるわけでもない。時間が余って、飲むところがない連中が自然に集まるということだけだ。T、K、M、Oと私の五人。去年はともう一人のがいたっけ。大晦日に雪が降ったものだから、結構みんな家にいたようでテレビの話題が中心になった。

 「紅白」「K1」「プライド」「タケシの超常現象」が肴になった。我々にとって「細木和子」は物の数に入っていない。どう考えても胡散臭い。「ギター侍」と「細木和子」がテレビに出てくるとチャンネルを絶対に変える。というのが三人はいる。ビデオリサーチ社の皆さんへご忠告しておく。視聴率の機械を絶対に我々の家庭に取り付けないで下さい。
Tは紅白の前に、テレ東のなつかしの歌を見ていたらしく「小林旭が特別に4曲も歌ったんだぜ。あの自動車ショー歌もやったんだよ、それ聞いてたらNHKが気になっちゃってさ、絶対無理だろ、あの歌」
Kが続けて「そうだよな全部商品名だからな。昔、山口百恵の、真っ赤なポルシェって歌詞も騒がれたしな」Mが「俺も観てたよ、帆波が毎年言うやつだからな、そしたらマツケンサンバやってたぞ、冠二郎と香田晋とで、あの歌さぁ、歌詞ほとんど無いのな」

 
私も「あの番組で俺も初めて聞いたんだよ。ほんとに歌詞無いのね、紅白でどうすんだろと思ったよ」
Oは格闘技を二台のビデオで録画しておいて、十時頃まで仕事だったらしく、手持ち無沙汰にハイボールをぐいぐいやっている。
私はブログで見つけた「冬ソナ」の主題歌の日本語訳というかアテレコというか、そのことを話していた。
「目がうすうすこんばんこ・・ってそのまま読めば韓国語っぽくなるんだよ。紅白でRyuが出てきたときはちょっとウルっと来たね」
「帆波も馬鹿だね。何処が良いんだよあんなの、みんな同じ筋じゃない」
「同じ筋ってKも詳しいんじゃない。」やっと
Oが話に入ってくる。「家のかみさんも好きでな、DVD買わされちゃったよ、ビデオの録画なんかいつも俺がやらされてたのに、DVDの操作は完璧にマスターしてやがんの。12時間とか平気で見てんだよ、びっくりするよ」

 去年の「冬ソナ」ブームは凄かった。冷静に考えてみれば、中高年の女性を対象にしたコンテンツを日本のメディアが提供できていなかったと言うことに尽きるのだが、バーチャルやフィクションなどと格好いい表現に誤魔化されるのではない現実感の無さ、というものがドラマ作りには大切なものなのだなと改めて気付かされたことは事実である。紅白について
Tが言う。
「もう紅白も終わりだな。特に演歌歌手なんかは歌詞と衣装のギャップが酷すぎる。むしろ歌詞をテロップにしなければいいと思うよ。女が捨てられたとか、寂しいとか、そんな歌詞なのに、ギラギラの衣装だろ。何時までも貴方を待っていますって言ったって、あんな高そうな着物で言われてもな」
「ほんとだよ、現実感が無いのな」
Mが言う。

 「全部嘘臭いんだよね。バラエティーならバラエティーに徹しなきゃ。波田陽区が斬ってたけど、紅白の勝敗なんて誰もなんとも思ってないぜ、根本的に合戦じゃないもの、司会のコメントも気持ち悪いくらい持ち上げるしな」
Kも、「現実感が無いなら無いで、宝塚みたいにショーアップされていれば良いんだよ。紅白にはそれも無いしね。今回なんて長山洋子が歌ってた時、後ろのスクリーンに次に出てくる連中が準備してるのがうっすら見えるんだもの、夢何も無いよあれじゃ」
私も思うことを言う
「出てくる歌手にはそれぞれ一年間やってきたドラマがあるはずなんだけど、そういうもの自体を切っちゃってるからな。だから嘘じゃなくて嘘臭いんだよ。嘘なら嘘に徹したほうがいいんだよ。ショーなんだから、氣志団のステージくらいだろ意外な面白さがあったのは。それでも時間的に短過ぎて良さが出たとは言えないけど」

 「俺は毎年、仕事があるから全部は観られないんだけど」と
Oが「演出でもいいから、突発的なこと、事件とまでは言わないけど、そういうワクワクが無いんだよ。安倍なつみの盗作問題にしたって、言葉は悪いけど利用する手だってあったんだ。何もかもがストップウォッチで管理されて、台本通り時間が流れていくって言うの、それじゃぁ詰まんないよ」
「で結局、トリまで観ないで初詣でに出かけるってパターンか」
Tの意見に全員が頷いた。

 紅白歌合戦の視聴率が低下の一途をたどっている。だがまてよ、NHKにとって視聴率とは何なんだ?そもそも視聴率とは本来販促の資料に過ぎないはずだ。視聴率の良し悪しは、番組が高尚であるかどうかの基準ではないのだ。視聴率が問題になるのは民放であってNHKではないのだ。もっと言えば、大晦日にCMを流すことの対費用効果がこの数年で変わってきているということだ。効果があるのなら、強力なコンテンツを見つけ出すのは民放として当然の行為だ。相対的に紅白の視聴率が低下するのは当然の結果なのだ。紅白のあり方を視聴率で論じてはいけないのだ。酒が言わせた私達の結論である。

 このあと、Tと私の宇宙人解剖フィルムの揚げ足取り、O、M、Kによる地上最強は「ヒョードル」か「ノゲイラ」か「グレイシー」なのかという激論が続くのである。プロ野球の話は今年もこれっぽっちも出なかった。私がライブドアフェニックスのパーカーを着ていたにもかかわらず・・

 
2005年1月2日 葛飾区の某居酒屋。生3杯、ハイボールは7、8杯飲んだな。焼き鳥盛り合わせと刺身の舟盛りだけは割り勘。あとは自己責任。

   おかわり