EXIT
松橋 帆波様  お酒のたわごと   
   第10話     11月23日

 亀戸の、モツ焼き〇〇ちゃん。トイレの扉近くの棚の上にあるテレピに、詐歎商法のニュースが流れていた。元関係者という男が、モザイクの向こうから、仕掛けを説明していた。「あれサァ、俺の知り含いがやってんだよ」さっきまで私と、競馬のエリザペス女王杯に出走する、ファインモーションの話をしていた男が眩いた。

 面白い話が聞けそうだと思った私は、話題をその詐歎事件に変えようとした。ところが、もっと不思議な話が待っていた。「全部が全部じゃないよ、なんか、そういうプロダクションに登録してるんだってさ」「1回十万位になるらしいよ、まア、テレビ局にもよるらしいけど」rあいつの知り合いなんか、夕方のニュース総嘗めにしたことがあんだってよ。それも全部違う事件で」彼の不思議な言葉が続く。

 何度か聞き直したり、話の整理をして、私はやっと、その知り合いのことを理解することが出来た。実は、モザイクの向こうで詐欺事件の話をしている男と、私と飲んでいる男が知り合いなのは間違いないのだが、詐歎事件の関係者というのは真赤な嘘。彼は、テレピ局の依頼で、関係者を演じているというのだ。ヤラセかというと、これはヤラセではないらしい。

 つまり、ニュースの取材の過程で、裏側を暴露してもよいと言う、関係者が表われたとしよう。しかし、どんなにモザイクを掛け、音声を加工しても、関係者の回りにいる人間、例えぱそういった組織の人聞には、モザイクの掛かっている人物の正体が、喋り方の癖、腕時計や指輪などのアクセサリーなどで直ぐに特定されてしまう。そこで、晴報提供者になりすまして、モザイクの向こうで取材情報、暴露情報を話す、彼の知り合いのような人たちが存在しているらしい。

 CMや映画のエキストラを派遣する会杜などへ、局から声が.掛かるという。やはり演技力が求められるので、誰でもというわけにもいかない、それにあまりペラペラ喋られても困る、だから、大体同じ人達が、幾つもの役回りをモザイクの向こうで演じているのだと彼は言う。 

 私が「今度、そういうシーンぱかりピデオにとって見比ぺてみようかな」そういうと、彼は「俺、そういうの見せてもらったことがあるんだよ。みんな違う役だったけど、知り合いが見るとあいっだって判るもんだよ。あれじゃあ、本人が出てきたら回りにパレちゃうよ、だからヤラセとかじゃなくて、仕方がないかもね」面白い男、いや話だった。

 海外ではメディアリテラシーという事がよく言われる。商業ジャーナリズムと、どう付き合っていくかを教育すると言う考え方だ。日本もそういうものが必要かも知れない。疑えば何でもきりがないのだが、ライパルメーカーの商品に、モザイクが掛かるテレビ番組に、真実の限界があることは間違いないのだから。 十一月某白

 
 亀戸モツ焼き〇〇ちゃん アサヒスーパードライ3本、レモンハイ3杯、焼鳥ねぎま4本、パラ串3本、冷やしトマト、煮込み1皿。

  おかわり