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松橋 帆波様  お酒のたわごと   
   第8話     9月23日

 競輪はラインだよ。ラインが分からなければ取れねえんだ。けど、そんな競輪が変わろうとしてるんだよなあ。選手のランク付けが、S・A・Bの3級9班から、S・Aの2級5班になって、昇格・降格を決める評価点の計算法が、基準出走回数から全レースの累計計算になったし、S級下位選手とA級上位選手、各二百名の強制入換えまである。それに評価点の低い選手には引退という言葉が待ってる。就職斡旋なんてのもない。結局、今まで以上にシビアなレースをしていかないと、生き残っていけなくなっている。

 今までのように、ラインや展開で予想していても、引っ張っていくよりも白分が先に行っちゃう奴や・曳いてもらえないとなれぱ早めに仕掛けたりする奴もいる。最近の準決以上なんて、落車や失格審議が多いもんなあ。それに極めつけなのが、三連単車券。今までは二車単で七十二通りだったのが、五百四通りの組み合わせになった。当然、配当が良い。百円が数万円、いや百万円も夢じゃない。今まで通りの予想をしていた奴等だって、配当に釣られて三連単を買ってるもんなあ。

 それにまた、競輪を知らネェ奴等が、数字ゲームの感覚で当てていきやがる。熱いファン以外に、そういった奴等が増えれば、競輪もギャンブルじゃなくて、レジャーとかいう奴になり下がっちまうんじゃネェかなあ。

 
北松戸の居酒屋で、そんな話を聞いた。不況知らずといわれた、ギャンブル場にも不況の声が聞かれて久しい。競輪も例外ではない。競輪場の閉鎖もあったし、年間レース数も少なくなっている。競輪選手は四千人位いるが、生活苦や、失業の危機にある選手の数も少なくない。起死回生の三連単。

 競艇が最初だった。始めは万舟券が続出。話題にもなったが。競艇は六艇で競うもの。コアなファンは、三連単の攻略に慣れてくる。だんだん配当も数千円の範囲に落ち着いてくる。競輪もやがてそうなるのか。特に間題は、客単価が減っていく事だ。不景気もあるが、ボックスで数を買っていくようになる。千円単位が百円単位になっていく。

 新しいファンが、JRAのように・レジャーとして競技の魅力に気付いてくれれば、文字通り三連単は起死回生となるのだが。公営ギャンブルは、果たしてギャンブルだろうか? テラ銭を二割五分も取られて、客は勝てるのか? 千円ずつ四レースやれば、結果はどうあれ、千円は始めから取られているんだ。四千円で三千円を買っているんだ。競輪の三連単は五百四通り。百円ずっ買っても、五万四十円以上の配当が出れば勝てるように思える。実際それ以上の配当が出ている。でもそれは、当たった数が少ないから、七割五分の金を分けても、その金額なるというだけのことなのだ。二割五分のテラ銭じゃ、ギャンブルとは言えない。レジャーだと思う。九月某日。北松戸の居酒屋。

 
ハイボール5杯、厚揚げ、シューマイ、イカ焼き、

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