春は三月花の頃となりました。御来場の皆々様、暇潰しに来られた方そして、お忙しい中をこっそり抜け出してお越し頂いた方、田辺三鶴厚く御礼申しあげます。本日は、季節に先駆けての講談『安倍麻呂を囲む花見の会』の一段、ごゆるりと堪能お楽しみくださいますようお願い申し上げます。

  (バン)

 時は元禄春爛漫の頃 ・・・ からずぅ〜 〜と下ります。平成も最後の30と1年目を迎え、ちらほらと櫻の開花宣言の便りが聞かれるようになりますと、私達は痛んている身体も何だか楽になったり、親子喧嘩していたご家庭でも「タイム」、と休戦宣言して、会社では上司のパワハラも止み、「今年の花見は何処でやろうか」などの御相談がリビングで、会議室で持ち上がる様でございます。

  (バンバン)

 ここは首相官邸の中、とある一室で官房室から補佐官数名、秘書室からも数名と、幕閣たちが丸いテーブルを挟んで、何やら打ち合わせをしている処です。なぜ丸いテーブルかと言いますと、誰が偉くて誰が末席かを決めるのに揉めることになるからであって、こういう所でも我々国民には計り知れないくだらない意地の張り合いが行われているからです。

え〜、本日進行役をさせて頂く言いだしっぺのどうでもA太郎です。本日の議題は、「安倍麻呂を囲む花見の会」についてであります。

A太郎さん、議題は一体誰が決めたんですか

勿論私ですが。何かご不満でもおありですか、ええかっこCさん

 

 始めっからこんな調子ですから、この会議は朝10時から始まって昼食を挟んで延々6時間掛かりました。その昼食メニューを決めるのに、皆さんてんでんばらばら、

俺、二日酔いだから、梅干し入りのおかゆ、プラス迎え酒冷で一本
僕は、昼はいつもスパゲティしか食べません
あたいは、お寿司、二人前。一つはテイクアウトの折詰にしてください

 やっぱ勝手気儘な注文風景が展開されたのです。兎にも角にも、何とか「安倍麻呂を囲む花見の会」の内容が決まったのであります。そこへ丁度散髪から戻ってきた安倍麻呂がドアを開けて、顔を出しました

やあ、皆さんご苦労様です。顔真っ赤にしたり、額から汗垂らして居る様ですが、何か決め事でもあったんですか? 毎日が退屈Dさん

あっその、この夏のエコ対策の件とですね、少し時間が余ったので、お花見やろうかな〜なんて雑談していたんです、総理

やるの? いいねェ何処で? いつ?
じゃあ今日はきけんB女史、発表してくれる?
あらわたし、記録録ってなかったんです。机の下でA太郎さんたら膝撫でてくるし、E寄るさんはおへそくすぐるし、手で払いのけるのに精一杯でしたのよ

おいおい、いつも貴方たちは見境なく遣るのはいけないよ。時と場所と相手を撰びなさいよ

まあ総理、

好いいよ好いよ、うちの昭恵も楽しみにしているからあいつに任せよう、それで良いですね


 (ババンバンバン)

 という事で4月某日、天気晴朗の下首相官邸中庭に於いて、ごく内輪ではありましたが「安倍麻呂を囲む花見の会」が開催されました。参加者総勢20名ほどの小規模ではありますが、そこは天下人を自認する安倍麻呂ですから、御本人は殿様気分でございます。

苦しゅうない、無礼講で参ろう
はは〜、
佳き日でおめでとうございます
奥方様に於かれましても、ご機嫌麗しく、何よりでございます
ありがとう。皆様も存分に楽しんでください
はは〜

 こうして始まった宴も佳境に入った所でございます。ほとぼりも冷めた頃、と国民をなめきって総理がお呼びしたお友だちのKKG理事長が立ち上がってこんな事を言いだした

皆さん、お聴きください。この度の新元号に、奥様のお名前の「恵」の字が入っている事が偶然だったか、どう思われますか? 実は、「新元号諮問委員会」のメンバーに、私の学園の教授が参画していて、愛媛に昨年開校した獣医学部設立の際の、総理の並々ならぬご尽力に対する恩顧のしるしとして、強く働きかけて実現した事を御報告します

おお、これはすごい。昭恵夫人にこの上もない贈り物でございますな

いやいや、ネタバレしました。最初聴いた時はチョッと「安」じゃなかったので、どうかな、と思ったんですが、これで女房孝行が出来たわけで、嬉しく思って居るわけでありまして ・・・

 

 その時上空に何処からかドローンが飛来してきて垂れ幕がパッと垂れたのであります (バン)
 「安倍麻呂、森友学園を忘れて貰っては困る」 それが第一波、続けて飛んできたドローンからは、「被災地より哀を込めて」、第三波は「辺野古よいとこ一度はおいで」、続けて「KOREAは怒っている」、次、「四島からさようなら」、次、「武器、高値売りつけます」

 脅すやらおちょくるやら、さまざまに垂れ幕を下げてドローンが上空に舞っております。宴の会場に居た人は皆、空を眺め口をあんぐりと開けて、ただこの光景を眺めるばかりでありました。そして、その隙をついて、国会の野党党首が統一して乱入し、残り物の酒や食べ物を一切合財かっぱらってしまいましたのが顛末の一部始終であります。「安倍麻呂を囲む花見の会」の一席、此れにて狂乱のうちに幕を下ろします。ご静聴ありがとうございました