料理メニューのトップへ 

『この頃の食生活』


 料理本にも玉石混合が有ると思います。兎に角、人は常識的には一日三回は食事をするのですから、「さて、何を食べるか」と必ず、その意識の程度の差があっても考えるわけです。この指針を与えるために書店では溢れるほどに料理本が並べられ、TV番組でも日本全国旨いものグルメ旅を流し、新聞雑誌でも、レシピから料理屋・レストラン、行列の出来るラーメン店の紹介などと、−−−絶対的に我々に食べるもの(料理)のガイドをしています。

 この中から、本当に自分の食生活における座右の書・きらめく情報を見つけることは、非難のワザと言うか、醍醐味と覚えて捜しだすのも、これまた食文化の領域に遊ぶ愉しみであります。

 意外と、熟本市(自分は古本の事を熟本と言っています)などの中に料理本の優れものを見つけてきました。自分が今、はまりつつある料理が『薬膳料理』です。きっかけが有って、昨年10月に、清朝最後の皇帝・西太后の食生活を詳しく記述した著書『西太后の不老術』という本を読んでからの事。その後に、とあるスーパーの催しコーナーの熟本市で薬膳料理の本を手に入れてから、この世界で展開される健康志向料理を自分で料理実践しています。

 薬膳素材は案外、身近なところに在ります。銀杏・白木耳(きくらげ)胡麻・長芋・蓮根・ユリ根・・・何よりも生姜(しょうが)の薬膳効果絶大であるのが嬉しいと思います。とにかく、今の日本人の二人に一人が癌の危険に晒される生活環境に居るのだから絶対、薬膳に精通すれば、この業病を回避する事の可能性が増えることと自分は信じています。『自然食』という要素が大きいのですから。

 人類が永い食生活で得た食素材は膨大な種類に及んでいます。あれも身体に善い、是も優れた栄養価が在る、更には、ミネラル、コラーゲン、ポリフェノールなどなど、様々な栄養の要素を人は、摂り入れてきた・・・にしてはかつて罹った事の無かった(少なかった)病に現代人は多く遭遇してしまっています。人体の生理上から患う病、そのうちの二つを自分も患ってきました。糖尿病と心筋梗塞です。三大疾患で残るは後が一つ『癌』です。

 パーフェクトでこれ等を全うしようとは思いません。幸いに今は健康体的に生活しています。かつての疾病の再発も厭です、これから残る一つの病にも絶対罹りたくないと思うのですから、何を心掛ければ良いのでしょうか?

 健全なる食生活です。

 かつての日本人は、この「健全なる食生活」には、それほど意識注意して心掛けるほどのことはしていなかったと思います。常日常で自然食を取っていたからだと思います。

 酒を自分は嗜みます。酒にあう肴は色々有りますが、例えば赤提灯に入って、煮込みを頼みます、焼き鳥を頼みます。細君を一度自分の好みのそういうお店に連れて行って、自分がこの店で定番で食べていたものを食べさせたところ、

 「凄いしょっぱい」

 と言いました。やはり、今の外食系は味を濃くして作っているようです。加工食品には、様々な化学調味料や、添加物が含まれていますが、このことを気にして自分はこの加工食品を限りなく減らした料理を作ることに心掛けてきています。かつて、五十歳台の途中頃まで意識しないで口に運んできた様々な加工食品はヤメにしてしていると思います。完璧ではないけれど大分減らしていると思います。

 多分、体内は以前と比べて可也牧歌的のどかな体液と血液が流れていることと思います。

 2009年から2010年にかけてのこの冬は、乾燥した晴天寒気が続いたから、ベランダで乾燥食材をいっぱい作りました。

 ・干し椎茸は100個くらいは作りました。出来たそばから消費しています。
   更に未だに製造中です。
 ・寿留女は5・6枚作りました。
 ・茹で干し大根は長崎西海湾の特産品だそうですが、作って、食べてみて
   さすがの美味さでした。
 ・乾燥ほたて貝柱・・・実は是は失敗しました。出来上がりの後の保存中に緑黴が
   生えてしまいました。

 近くのスーパーマーケツト施設の一角に近在の野菜栽培者が持ち込んだ市場があって、安価に野菜を買うことが出来るようになって、従来よりもかなりの様変わりで野菜を取り入れた食生活にも移行しています。或いは、通常の食品スーパーも半径500メートル範囲の中に五店舗ほどしのぎを削って営業しています。消費者には美味しい限りの買い手市場を展開する地域になってきました。

 在る団地が、或いはマンション群が出来て街を作りました。人がワンサカと入居してそこに食品スーパーが一・ニ店、その地域の住民の台所に食材を提供します。

 あのお宅、こちらのお宅恐らく「秋刀魚が安いよ」なんていうことで、ある冬の日にその地域の人口の過半数が一斉に食べて、同じ臭いの〇〇を排泄して・・・是って、バタリー式ゲージの鶏と同じ食生活って言えないだろうか?

 「厭だ!」ゼツタイにこんな食生活は送りたくない。

 ところで話がガラッという程度に変るのですが、アルバイト勤め先近くの駅ビル内に在る書店でこんな本、買うてきたんね。

 『文士料理入門』:狩野かおり・狩野俊(すぐる)共著・角川書店刊

 税別1000円、新書版で僅か159ページで、中味が濃くなければとてもじゃないが割高な本だったが、この本の中から早速夕餉のおかずの一品を作ってみて、さすがは文士がこだわる料理が如何に食文化的健康志向的にも味覚の優れ具合においても絶品であると言うことが実感できたのである。

 参考に創った一品は「鶏皮と椎茸の塩炒め」だ。味を塩だけでなく、中国薄口醤油“Soy Sauce”=「生抽王」を味のまとめで使ったのですが、さすがに簡単・美味い・安価。

 文士料理の基本は、文士の生き様・志向こだわりなどの真髄を料理に具現したものだと思います。その心掛けに有る事は、人と同じものは食いたくない。金を掛けて作りたくない食いたくない。人が馬鹿にしているような素材で美味いものを作りたい食いたい・・・こんな精神が込められた料理ではないでしょうか。

 是までも池波正太郎さん、吉田健一さん、壇一雄さんの料理随筆本等で彼らの優れた味覚についての表現や、食探訪記を読んできて学んだところ大だったが、こうして、この本の著者が具体的に一冊の本にまとめて上程してくれたことで、自分が彼ら文士に、より近づけたという悦びを期待を込めた感慨を以て予感し始めています。

 明日も出来れば何か創りたいと思っています。材料が安価な身近な食材であると言うことで、掲載された紹介料理は、敬遠したいような料理はないから、多分好みの順とか旬食材の季節順とかで拵えて行けば、実践的な読破に成りそうです。それぞれ紹介された料理はカラー写真で美味そうな出来上がりの姿を見せています。作り方も概ね簡単に仕上がるようになっています。また優れた料理本を手に入れたと思っています。

 平成21年3月17日

   料理トップへ